お伝えしている通り、世界最大の Mash-Up コミュニティ"Get Your Bootleg On(GYBO)"は、
先週、英国レコード産業協会"BPI(日本でいうところのJASRAC)"から、
"cease-and-desist notice(停止命令)"を受け取りました。
GYBOは、世界中の Mash-Up クリエイター達が作り出した
Mash-UpやBootleg Mixなどのmp3ファイルへのダイレクトリンクが集まる、
言わばMash-Up音源のポータルサイトのような存在。
それを誰もがダウンロードすることができたため、
音源についてのさまざまな意見が交わされるコミュニティとして成長を遂げてきたのです。
GYBOが誕生して約4年、近年ではコアなMash-Upファンだけでなく、
世界中のクラブDJや、はたまたBBCラジオのDJまでもがGYBOを利用するようになり、
Mash-Upクリエイターによって生み出された、原曲を超えるとも劣らないMash-Up音源は、
iGotのようなブログに紹介されるだけではなく、インターネットという特性によって、
世界中のDJ達が、世界中のクラブやラジオにてスピンするようになっていました。
このように、GYBOが徐々にそのコミュニティを拡大していくと同時に、
社会的にもMash-Upの認知度は高まっていき、
MTVの番組企画としてMash-Upが取り上げられたり、
Mash-Upされる側のアーティストが自身のWEBサイトでMash-Upを募集したりと、
アンダーグラウンドの存在であったMash-Upが世の中に受け入れられ、
メジャーな音楽ジャンルへと歩み始めていました。
そんな矢先、この盛り上がりに水を差したのが今回の事件です。
GYBOの開設以来、コミュニティ上に積もり積もったMash-Upへのダイレクトリンクは、
おそらくですが5000を超えていたかと思います。
停止命令を発したBPIに言わせれば、1つのコミュニティ上に、
それだけの数のMash-Up/Bootleg Mix mp3ファイルへのリンクがあるということは、
彼らが以前から最大限に警戒していたWinnyのような、巨悪な音楽ファイル交換ソフトと
同等の機能を持っているWEBサイト、とでも考えたのでしょう。
最早見逃すことが出来ない位に、GYBOが巨大化してしまったこと、
これこそが今回の停止命令の発端であったと個人的には考えます。
今回の事件を受けて、GYBOの管理人"McSleazy"は、すぐさまGYBOにスレッドを立て、
以下のような投票を受け付けています。
IS IT TIME FOR GYBO TO END?そして、現在もGYBO上ではコミュニティという特性を生かして、
さまざまな議論がなされていますが、とりあえずは、
これまでのダイレクトリンクをすべて削除し、
今後一切のダイレクトリンクを禁止することによって、
サイト自体の閉鎖はどうやら避けられたようです。
以上のように、この世界最大のMash-Upコミュニティへの一方的な措置によって、
アンダーグラウンドからメジャーなものへ歩み始めていたMash-Upは、
音楽社会から断絶され、再びイリーガルなMash-Upへと押し戻された格好になった訳です。
これは、Mash-Up が社会的に認められたオフィシャルな音楽への道が絶たれ、
まさに、Mash-Up の一つの時代が終わったことを意味するのではないでしょうか。
いくら、Mash-Up がカーメーカーのプロモーションに使用されたとしても、
いくら、Mash-Up が今年度のグラミー賞授賞式で披露され絶賛されたとしても、
いくら、Mash-Up の標的となるアーティストがその活動に賛同していたとしても、
いくら、Mash-Up を愛する世界中の音楽リスナーがそれに反発したとしても、
著作権を管理するという名目の、くだらない一団体のために、
イリーガルにつくれらたクリエイター達の自由な芸術表現は、
粗悪な物として見なされ、見捨てられていくわけです。
この場で Mash-Up が合法・違法ということについて、論議するつもりはありません。
合法という意見はもちろんのこと、違法という人の意見もわからなくはないです。
しかしながら、これは、Mash-Up に対する抑制であることは間違いありません。
それをつくるひと、たのしむひとの自由を阻害するものに違いありません。
これは、もうどうしようもなく悲しく寂しいことです。
しかしながら、このことは事実として前向きに受け止めなければならないかと思います。
いつか Mash-Up がそのような団体に認められ、
再びオフィシャルな音楽として日の目を見られるその日まで、
このブログでは、Mash-Upを紹介し続けていけたらと思います。